見どころ
闇社会で裏稼業を担う口の利けない青年が、ある日突然誘拐犯になってしまう犯罪サスペンス。
韓国社会の貧困や家父長制といった問題を巧みに描きながら、緊張感のある展開で観客を引き込む。特に、台詞のない難役を見事に演じたユ・アインの変貌ぶりが見どころ。
ストーリー
テインは鶏卵販売をしながら、犯罪組織の命令で死体処理を請け負う裏稼業で生計を立てていた。
ある日、相棒チャンボクと共に組織の命令で誘拐された少女チョヒを1日だけ預かることになる。だが状況は次第に悪化し、やがて取り返しのつかない事態へと進んでいく。
感想
ユ・アインがこれまでの「イケメン」イメージを脱ぎ捨て、太っただらしない体型で登場。そして話せない役柄なので一切のセリフはない。
かっこよさを捨てた彼の姿に、役者としての新境地を感じる一方で、本人の現状を思うに、その俳優という仕事とどう向き合っているのか、辛いことも多いのだろうなと考えさせられる。
死体処理という題材ながら、どこか穏やかな雰囲気が感じられるシーンが多かった。
主人公やその周囲の人々は直接的な殺人を行っておらず、これが物語の独特な優しい空気感がある。
テインは信頼できる人を次々と失い、孤独な状況に追い込まれていく。
特に、彼が少女チョヒに振り回されながらも彼女に信頼を寄せる姿は痛々しく、最終的に裏切られる展開が切なさを増幅させていた。
広がる田舎の風景や、登場人物たちの境遇から、日本映画特有の哀愁に似たものを感じる作品だった。
特に、田舎の風景が美しく描かれており、大画面で見る価値あり。
この作品に登場する悪人たちは、単なる極悪人ではない。
彼らは仕事で悪事を働いているだけで、その人間味や「実はいい人」な部分が垣間見える。
現実もそういう事が多いんだろうなと思わざるを得ない。
映画は全てを説明せず、観客に想像の余地を残す形で終わる。
余韻を残すというのは難しいのだと思うが、この映画の場合はこれが映画全体の魅力を高め、後を引く良い余韻を生んでいた。
グロテスクな描写やセクシーなシーンがほとんどないため、意外にも家族で鑑賞することも可能かも。
起承転結
起:卵を売りながら死体処理を請け負うテインとチャンボク。誘拐された少女を1日だけ預かることになる。
承:依頼主である室長がトラブルで消される。身代金を回収するため、少女の面倒を見るが、彼女は脱出の機会を狙う。
転:身代金受け取りの際、チャンボクが命を落とし、テインは警官を殺してしまう。少女との関係が複雑化する中、彼は彼女を助けたいと思うようになる。
結:少女を学校に送り届けるが裏切られ、テインは誘拐犯として通報される。彼女は平穏な生活に戻り、テインは孤独な未来へ向かう。ポラロイド写真が象徴的に映し出され、物語は終わる。
映画情報

原題:소리도 없이(声もなく)
公開年:2020年
監督:ホン・ウィジョン
主なキャスト
ユ・アイン:テイン
ユ・ジェミョン:チャンボク
ムン・スンア:チョヒ
ユ・ソンジュ:イルキュ
イ・ガウン:ムンジュ