見どころ
ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が、北朝鮮の日常を記録しようとしたドキュメンタリー映画。
撮影中、当局から提供された台本通りにしか撮影ができず、厳しい監視が常に行われたため、撮影班は監視される前の無編集フィルムをこっそりと持ち出した。
主人公の少女ジンミの日常と、朝鮮少年団への入団式を通して「最高の国の日常」を描こうとする当局の演出と、演技ではない子供の本当の姿が垣間見えるのが見どころ。
人々の行動すべてが「やらせ」であるが、チュチェ思想の教育の徹底ぶりや、体制維持の執念が伝わってくる作品だ。
ストーリー
北朝鮮の一般家庭の生活に密着する許可を得たヴィタリー・マンスキー監督。しかし、撮影できるのは北朝鮮当局の指導のもとで演じられる「日常」だけだった。
監督は「真実を映す」ため、その場の出来事を隠し撮り続けた。
幼少期から始まる偶像化教育やチュチェ思想の徹底が描かれており、エリート家庭の子どもたちは朝鮮少年団への入団を経て一生を通じた偶像教育を受けることが示される。
感想
この映画は、北朝鮮で演出のない”普通の庶民の生活”をカメラで捉えたドキュメンタリーという目的で撮影されたが、実際はすべて当局の監視下での「演技」だった。
そしてその裏側もコッソリ撮影していた。だから、日常生活も全部台本どおりということがわかり、北朝鮮では庶民の生活がいかに制限されているかがよくわかる。
観光で訪れたアメリカ人の大学生が、(ポスターをはがしたかどで?)捕まって、脳死状態で返されたような事件がある北朝鮮。
よくこのフィルムを持ち出せたと思う。
この映画を観てると、国全体で芝居を演じてるみたいに感じる。
家族たちが無表情で淡々と「日常」をこなしていく姿が映し出される。ものすごく不気味で、北朝鮮は隅々まで管理されている。
なんというか、まるで”学芸会”を見ているような気分。
テレビでは金正恩を称えるつまらない番組のみ。習い事は国家行事の踊り等。
学校では美人の先生が汚い言葉でアメリカ、日本、韓国を罵り、神話のようなキム一族の伝説を語る。
先生や子どもたちはこれを本気で信じているのか?
ただ、この監督は、当局の目をすり抜け、隠せない子供の真の表情をとらえる。
特に衝撃的だったのは、「何も楽しいことがない」と泣く少女が、「好きな詩を言ってみて」と促され、金正恩を称える詩をとつとつと読み上げる場面。
本当に好きな詩なのか、それともそれしか知らないのか、反射的に出てしまうのか、これこそが北朝鮮の洗脳の恐ろしさだと思った。
庶民のつつましやかな生活(リアルミニマルライフ)は一見羨ましいくらいだけど、思想の自由がまったくないのはあまりにも息苦しい。
彼らは自由を求める気持ちがあるのか、それともこのまま従順に生き続けるのか…。
映像はすごくきれいて、フェリーニの映画のようなシュールさがあるけど、これが”現実”なんだと思うと背筋が凍る。
ぜひ見て欲しい
映画情報

原題:태양 아래 (Under the Sun)
公開年:2015年
製作国:ロシア、チェコ、ドイツ、ラトビア、北朝鮮
監督:ヴィタリー・マンスキー
主人公の少女:ジンミ